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1強・・それぐらいの存在でなければ、一癖も二癖もある各国のリーダーたちと渡り合えない [■産経抄]

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【産経抄】7月21日

 通常国会は20日に実質的に閉幕し、永田町の関心事は今後、9月の自民党総裁選一色に染まっていく。今のところ安倍晋三首相の連続3選の可能性が高いが、政界一寸先は闇である。昭和53年の総裁選で、大平正芳氏に敗れた福田赳夫氏はこんな名セリフを吐いた。「天の声にも変な声がたまにはある」。

 ▼平成24年の総裁選での安倍首相の勝利も、ある意味で番狂わせだった。5人の立候補者のうち、下馬評では本命どころか3番手がいいところだとされていた。持病の悪化で、1年間で政権を手放した弱い政治家だとのイメージも根強く残っていた。

 ▼ところが、他の有力候補が失言を繰り返したり、病を得て入院したりで勝手に失速していく。結局、安倍首相は第1回投票では2位につけ、決選投票で実に56年ぶりの逆転勝利を果たし、総裁の座に返り咲いた。ツキの波が押し寄せているように感じた。

 ▼司馬遼太郎さんが日露戦争を描いた国民的小説『坂の上の雲』に、明治天皇がなぜ地味な存在だった東郷平八郎を連合艦隊司令長官に抜擢(ばってき)したのかと尋ねる場面がある。海相、山本権兵衛はこう答える。「東郷は運のいい男ですから」。

 ▼5年5カ月と戦後4位の長期政権を築いた小泉純一郎元首相は、かつて東京都内での街頭演説で、この人らしく明け透けに述べていた。「運というのは大事ですよ。人間やっぱり努力、才能もあるけど、ほとんど運ですよ」。

 ▼まだ誰も正式に出馬表明していない段階で気が早い話ではあるが、事実上、首相となる自民党総裁には強運の持ち主に就いてほしい。そして「1強」と呼ばれ、長く政権を担当してもらいたい。それぐらいの存在でなければ、一癖も二癖もある各国のリーダーたちと渡り合えない。


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劇団四季・浅利慶太・・「権力に振り回されない自信がある」。政界とのつながりを批判されても、平然としていた [■産経抄]

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【産経抄】7月20日

 一昔前「一杯のかけそば」の童話が話題になった。浅利慶太さんにとっては「実話」である。「今の新劇は言葉がはっきり聞き取れない芝居と、特定の旗印や思想しか掲げない芝居、この2つしかない」。

 ▼劇団四季の結成直後は、盟友の故日下武史さんとこんな話ばかりをしていた。ある日、かけそばが20円から30円に値上げしていた。40円しか持っていない2人は、1杯を分け合いながら演劇の話を続けた。

 ▼フランスの近代劇を主に上演していた劇団が、東京五輪が開催された昭和39年に転機を迎える。ミュージカルの本場ブロードウェーの「ウェストサイド物語」の日本公演が実現した。25回見た浅利さんはコツを覚えた。「キャッツ」「ライオンキング」「オペラ座の怪人」…。劇団の舞台でミュージカルの魅力の虜(とりこ)になった人は数多い。

 ▼「浅利慶太は楽しませ手であって、演劇の極北を目指す芸術家ではない」。慶応大学の同級生で、後に文芸評論家となる江藤淳さんの予言通りだった。「ミュージカル李香蘭」「異国の丘」「南十字星」の「昭和3部作」も、劇団の大切なレパートリーとなった。「前世紀の悲劇を語り継ぎたかった」浅利さんによるオリジナル作品である。

 ▼演出力は、政治家からも頼りにされた。中曽根康弘首相がレーガン米大統領を日の出山荘会談でもてなしたのは、浅利さんのアドバイスである。佐藤栄作首相の退任会見で起きた新聞記者との衝突事件も、浅利さんが現場にいれば丸く収まっていたかもしれない。

 ▼「権力に振り回されない自信がある」。政界とのつながりを批判されても、平然としていた反権力を権威の証しとしてきた新劇に対する、かけそば時代から変わらない反骨でもあったろう。

 


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空想話・・ [■産経抄]

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【産経抄】7月19日

 「選挙介入したのはロシアではない理由が見当たらないと言おうとして、言い間違えた」。トランプ米大統領は17日、ホワイトハウスで苦しい釈明を迫られていた。

 ▼2016年の米大統領選について、米情報機関はロシアのサイバー攻撃による干渉があったと断定している。特別検察官は、ロシア軍の情報当局者12人を起訴した。もっとも前日に行われた米露首脳会談後の会見で、プーチン大統領は「干渉は一切やっていない」と言い張った。

 ▼「ロシアが干渉する理由は見当たらない」。トランプ氏の発言は、自国の情報機関が下した結論を否定し、プーチン氏の肩を持つものだった。当然、米国内から批判が噴出していた。「綸言(りんげん)汗の如(ごと)し」。皇帝が一旦発した言葉は、汗が再び体に戻らないように取り消すことはできない。トランプ氏は中国の格言には興味はないだろうが。

 ▼ただロシアのサイバー攻撃に果たして、トランプ大統領誕生を後押しする力があったのか、依然謎である。たとえば、約10年前に英ケンブリッジ大学の大学院生が取り組んでいた心理学の研究を活用すれば、可能らしい。

 ▼大学院生は、インターネットの交流サイト、フェイスブックの利用者が「いいね!」ボタンを押すパターンを分析していた。するとチョコレート菓子の好みなどから、利用者の支持政党が判定できた。つまり、データを逆に使えば、効率よく特定の候補に誘導する情報を送ることができる。

 ▼毎日新聞の福本容子記者のコラムでこの技術を知った。福本記者は憲法改正の国民投票で利用される「空想話」を披露している。小欄は別の空想をする。憲法改正と日米同盟の強化を阻止したいどこかの国が、総選挙の最中にサイバー攻撃を仕掛けてきて…。

 


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「おいしいおかずにいい女」を求めた 「サムライアーティスト」 [■産経抄]

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【産経抄】7月18日

 北海道七飯町(ななえちょう)の公園に展示されている彫刻「もどり雲」は、流政之(ながれ・まさゆき)さんが、戦没者への慰霊の思いを込めて制作したものだ。平成18年の除幕式には、裏千家前家元の千玄室さんも出席して茶会を開いた。2人は海軍航空隊の同期である。流さんは零戦に、千さんは偵察機に搭乗し、共に特別攻撃隊要員だった

 ▼戦後、無頼な生活を送るなか、常に流さんの心にあったのは、日米戦没パイロットの弔いである。木を刻み、金属を曲げてつくった追悼の作品で個展を開いたのは、昭和30年、32歳の時だった。

 ▼国内の美術界の反応は冷たかったが、英字紙は「ゼロ・ファイターの芸術」と大きく取り上げた。その後石彫りの技法を得て、流さんの言葉を借りれば、いよいよ米国に「殴り込み」をかける。

 ▼ニューヨークでの初めての展覧会は大盛況だった。「アメリカ人の女に抱きつかれ、口づけされた時に『あー戦争は終わったんだな』と思った」。後に振り返っている。米誌「タイム」には、日本を代表する5人の芸術家の1人として紹介された。あとの4人は、川端康成、丹下健三、三島由紀夫、黒澤明である

 ▼立命館大学の創設者である父親の方針で、少年時代は古流武道を習っていた。作品に虚無が漂うとの評に対しては、戦争であまりに多くの死を見たからではないか、と自己分析する。「サムライアーティスト」として世界に知られた流さんの訃報が届いた。95歳だった。

 ▼自らを「フーテンの寅」になぞらえていた。「おいしいおかずにいい女」を求めて、日本全国を旅してきた。同僚記者が、高松市内の瀬戸内海に面したアトリエを訪ねたことがある。取材が終わると、とびきり美人の女将(おかみ)がいる料理屋でごちそうになったそうだ。


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『海水功用論 附海浜療法』・・もともと国民の健康を向上させるのが目的だった海水浴 [■産経抄]

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【産経抄】7月17日

 物理学者の寺田寅彦に『海水浴』と題した随筆がある。明治14年の夏、父親に連れられて愛知県の海辺の町大野で過ごす場面で始まる。数え年4歳の寅彦は体が弱く、医師の勧めによるものだ。

 ▼まだ「海水浴」という言葉は一般的ではなかった。丸裸で海につかり体を鍛える民間療法は、「塩湯治」と呼ばれた。もっとも寅彦は、海を怖がって泣き叫ぶばかりだ。仕方なく宿で海水を沸かした風呂を仕立ててもらった。ひと夏の湯治ですっかり体が丈夫になった。

 ▼海水浴の歴史にくわしい畔柳(くろやなぎ)昭雄さんによると、当時愛知県病院長を務めていたのが、後に満鉄総裁や外相を歴任する後藤新平だった。病気の治療より予防に関心があった新平も、大野の塩湯治に目を付けていた。15年には、ドイツの医学書などを踏まえて『海水功用論 附海浜療法』を発表する。海水浴場として大野の発展にも力を尽くした(『海水浴と日本人』)。

 ▼もともと国民の健康を向上させるのが目的だった海水浴は、次第にレジャーの色合いが強まっていき現在に至る。「海の日」の昨日、日本列島各地は、軒並み30度を超える猛暑に見舞われた。いよいよ本格的な海水浴シーズンの幕開けである。

 ▼実は国内の海水浴客は、昭和60年をピークに減り続けている。レジャーの多様化が主な原因らしい。海の恩恵に感謝し、海洋国日本の繁栄を願う。海の日の意義からも、海と親しむ機会を大事にしたい。波打ち際でスイカ割りに興じ、はしゃぐ子供の歓声をもっと聞きたい。

 ▼ただし、水の事故にはくれぐれも気をつけていただきたい。警察庁のまとめによると昨年、全国の海や川、プールなどで発生した水難事故による死者、行方不明者は679人にのぼっている。


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東京医科大学・・東京地検特捜部はすでに、不正合格者のリストを入手している。 [■産経抄]

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【産経抄】7月16日

 兵庫県西宮市にある中高一貫の名門校、甲陽学院で、村上千秋先生は長く国語を担当していた。ある講習で、生徒にこんな話をしたそうだ。受験の季節になると、あいさつにやって来る受験生の両親についてである

 ▼私にはまったく力がないから、なんの意味もない。現に私の息子は、この学校の入試に落ちている。息子とは、ノーベル文学賞有力候補の作家、村上春樹氏である。OBで元警視総監の池田克彦氏が先日、日経のコラムで書いていた。

 ▼入試に情実が入り込む隙間はない。そう言い切りたいところだが、特別なルートの存在を信じる人が、後を絶たない。だからこそ、テレビのサスペンスドラマや推理小説で、裏口入学が繰り返し題材に選ばれる。

 ▼文部科学省の前局長が受託収賄容疑で逮捕されたのは、今月4日だった。東京医科大学に便宜を図る見返りに、自分の息子を合格させてもらう。これを果たして賄賂と認定できるのか。異例の事件が新たな展開を見せている。東京医科大学が数年前まで、毎年10人前後の受験生を不正に合格させていた疑いも出てきた。東京地検特捜部はすでに、不正合格者のリストを入手している。

 ▼入試問題の漏洩(ろうえい)や替え玉受験。受験生の父母に嘘の裏口入学を持ちかけ、現金をだまし取る手口もあった。大学が長年にわたって、組織的に特定の受験生を合格させていたとしたら、大学不正入試の歴史のなかでも、悪質さは際だっている。

 ▼「能力がないなら、お前の親を恨め」。韓国の朴槿恵(パク・クネ)前大統領の友人の娘が、名門女子大に裏口入学後にうそぶいた。この一言が、若者の怒りに火を付け、前大統領は罷免に追い込まれた。リストに載っている元受験生と親は、今頃すくみ上がっているはずだ。


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「水見舞(みずみまい)」 [■産経抄]

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【産経抄】7月15日

 語感は耳に優しくても、使う機会がないに越したことはない。そんな言葉は多い。「水見舞(みずみまい)」はその一つである。洪水や浸水など水害に遭った地域を気遣い、見舞うことをいう。歳時記には夏の季語として載っている。

 ▼国文学者の池田弥三郎さんが「水見舞に水」と書いていたのを思い出す。井戸に頼った昔は水害にやられると、何よりも飲み水の確保に急を要した。〈水提げてなほ降る中を水見舞〉広江八重桜。見舞いの品として水が重宝されたことは、この句からもよく分かる。

 ▼あれほど激しい雨を降らせた空には、一転して「梅雨明け十日」の青が広がった。犠牲者が200人を超えた西日本豪雨の被災地は、深刻な水不足に見舞われている。やがて夏の盛りを迎えるというのに、断水が続く地域はまだ多い。感染症や食中毒も心配になる。

 ▼復旧を急ぐ被災地にはボランティアが駆けつけているものの、折からの暑さにやられ、熱中症で運ばれた人もいると聞く。せっかくの水見舞いが現地の荷厄介になってはもったいない。天候などの状況、自身の体調を十分に見極め、無理なく支援したいものである。

 ▼16日までの3連休は猛暑が続くという。被災地で活動する方々は手元に飲み水を、心には「潤い」の2文字を忘れないようお願いしておく。遠隔地に住む人なら、ふるさと納税や義援金という形の水見舞いもあろう。被災地にとっては干天の慈雨となるに違いない。

 ▼災害報道で目にする「安否」も、できれば使いたくない言葉の一つである。連絡のつかない家族や友人の帰りを待つ人たちの思いは、「無事か否か」ではあるまい。広島県などには今も多くの行方不明者がいる。「無事を信じる」の一念を送ることで小欄の水見舞いとしたい。


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連合迷走・・惰性で「政治ごっこ」を続け、特定政党・議員を延命させている。 [■産経抄]

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【産経抄】7月14日

 「細川護煕政権が発足して首相官邸が自分のものになった気がしたよ」。一昨年4月に亡くなった連合の初代会長、山岸章さんはかつて小紙インタビューで、自らが生みの親の一人である細川政権についてこう回想している。ただし、高揚感はわずか1カ月後には失望に変わった

 ▼山岸さんは、やはり連合が政権樹立の立役者となった民主党政権に対しても辛辣(しんらつ)だった。「理想論ばかりで政権担当能力がなく、国民に失望を与えただけだった。あんな政権ならとらない方がよかった」。率直にして明快な感想である。

 ▼加盟組合員数約700万人の日本最大の労組団体、連合が迷走している。民主党が民進党となり、さらに希望の党による「排除」を経て立憲民主党と国民民主党などに分裂したため、傘下の産別労組の支持政党も股裂き状態となった。これでは、3度目の政権奪取どころではない。

 ▼平成24年の第2次安倍晋三内閣発足以降は、肝心の賃上げも、首相官邸が直接経済界に要請する「官製春闘」が主導している。連合が政治活動に多大なカネと組合員の労力を費やし、特定政党に肩入れすることにどんな意味があるのか。組合員は本当にそれに納得しているのか

 ▼連合傘下の電機連合が12日公表したアンケート(約1万8千人回答)では、昨年10月の衆院選での組合員の投票先は小選挙区、比例代表ともに自民党がトップだった。組合執行部が上から支持政党を決めても、組合員は生活感覚で投票先を選ぶものなのだろう。

 ▼このまま惰性で「政治ごっこ」を続け、特定政党・議員を延命させることに、何か展望があるようにはとても見えない山岸さんが味わった幻滅を繰り返さないためにも、政治から距離を置いてはいかがか

 


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「雪は天から送られた手紙である」 [■産経抄]

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【産経抄】7月13日

 東京・銀座のギャラリーで今年の初め、「グリーンランド」と題した展覧会が開かれた。水を使って人工的に発生させた白い霧が、展示空間をふんわり包み込み、氷河の滝を表現していた。「霧の彫刻」の第一人者である中谷芙二子(なかや・ふじこ)さん(85)の作品である。

 ▼北極圏の地グリーンランドは、芙二子さんの父であり、「雪博士」として知られる物理学者、宇吉郎がたびたび調査に訪れている。会場には、宇吉郎が世界で初めてつくり出した人工雪の結晶の写真や研究ノートなども展示されていた。父と娘の深い情愛が感じられる二人展だった。

 ▼米国の大学で美術を学んだ芙二子さんは、その後パリに渡って藤田嗣治(つぐはる)の下で修業する。帰国後東京で油絵の個展を開いたのは、宇吉郎が亡くなる直前だった。やがて芙二子さんは、絵画での表現に飽き足らなくなり、テクノロジーと結びついた現代アートに取り組んだ。

 ▼昭和45年の大阪万博では、ペプシ館のパビリオン全体を人工の霧で覆いつくし、世界を驚かせた。以後世界各地で、80を超える作品を発表してきた。実は宇吉郎は戦時中、霧の研究にも携わっていた。北海道東部に春から夏にかけて頻繁に発生する霧は、航空関係者にとって悩みの種だったからだ。なんとか消す方法を探っていた霧を、娘がわざわざ工夫を重ねてつくり出し、現代アートに仕立てるとは。宇吉郎は夢にも思わなかっただろう。

 ▼「雪は天から送られた手紙である」。寺田寅彦門下の宇吉郎は、こんな美しい言葉で、科学随筆の名作をいくつも残している。絵筆を執っては展覧会を開くほどの腕前、日本舞踊の「助六」も踊る芸術の愛好家だった。

 ▼芙二子さんの世界文化賞(彫刻部門)受賞を、誰よりも喜んでいるはずだ。


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〈「ありがとう」 夜勤の廊下 逝った君〉。 [■産経抄]

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【産経抄】7月12日

 〈蓄尿瓶 洗う心は ナイチンゲール〉。現役看護師の川柳を集めた『ナース川柳看護婦七転八倒』(幻冬舎文庫)で見つけた。蓄尿瓶を洗っていると、尿が顔や手に飛び散ることがある。「これも患者さんのため」。惨めな気持ちをナイチンゲール精神で吹き飛ばす、というのだ。

 ▼入院生活を体験すれば、看護師さんの仕事がいかに大変かよくわかる。それでも、特に女性の間で人気の職業である。収入が高く、出産や育児で休職しても復職しやすい点が魅力らしい。

 ▼日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が今年4月にまとめた「2017年小学生の将来なりたい職業」によると、男子の1位がサッカー選手だったのに対し、女子の1位は看護師だった。小学生があこがれるのは、ナイチンゲールに由来する「白衣の天使」のイメージに違いない。

 ▼神奈川県警に今月7日、逮捕された31歳の女は、どんな理由で看護師の仕事を選んだのだろう。横浜市の大口病院では平成28年、患者の中毒死が相次いでいた。女は、88歳の入院患者に消毒液を注入して殺害した容疑を認めている。「ほかに約20人の患者に入れた」とも供述している。

 ▼看護の世界では、自分の担当時間に患者が死亡することを「当たる」と表現するそうだ。〈当たらない ようにと願う 夜勤入り〉。確かに、看護師に共通する願いであろう。そうであっても、女が語る犯行動機は理解に苦しむ。「担当時間に患者が亡くなると、遺族に説明するのが面倒だった」。

 ▼〈「ありがとう」 夜勤の廊下 逝った君〉。作者は夜勤中、以前入院していた患者の霊にしばしば遭遇して、感謝の言葉をかけられることもあった。女は患者の霊に、どんな言い訳をするつもりなのか。


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地下鉄サリン・・23年前の一連の出来事と、稚拙な政府対応からくみ取れる教訓とは何か。 [■産経抄]

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【産経抄】7月7日

 その朝、早起きして初めての海外出張のため成田空港へと向かい、当時所属していた社会部に「今から出発します」と電話をかけたところ、受話器から怒鳴り声が響いた。「地下鉄で人がばたばた倒れているんだよ。何やっているんだ」。平成7年3月20日の地下鉄サリン事件である。

 ▼戦後50年のこの年、首相は社会党出身の村山富市氏が務めていた。村山氏は、事件を起こしたオウム真理教への破壊活動防止法適用に極めて慎重だった。最終的には適用手続きを取ったが、公安審査委員会は適用を見送る。村山氏の消極姿勢も影響したとみられる

 ▼1月17日には、6千人を超える死者を出した阪神大震災も発生していた。危機管理という発想自体乏しく、自衛隊活用にも抵抗感があった村山氏の動きはひたすら鈍重で、国会で初動対応の遅れを問われるとこう答えた。「なにぶん初めてのことで…」。

 ▼それでいて、イデオロギーに絡む問題では強引で強権的だった。アジア諸国に、痛切な反省と心からのお詫(わ)びの気持ちを表明した「村山談話」は、閣僚にも事前に知らせずに8月15日の閣議でいきなり決定した。「この程度のものを出し切らなければ、総理をやった意味がない」。著書でこう述べている。

 ▼未解決のまま時効を迎えた警察庁長官銃撃事件が起きたのも、この年3月である。オウム真理教の元教祖、麻原彰晃死刑囚ら7人の死刑が6日執行されたことで、当時の浮足立ち、不安感に包まれた世相がありありとよみがえった。

 ▼23年前の一連の出来事と、稚拙な政府対応からくみ取れる教訓とは何か。その後のいくつかの政権についてもそうだが、国民も国会議員も、安易に国のリーダーを選ぶと大変な目に遭うということは言える。


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「人の親の 心は闇に あらねども 子を思ふ道に まどひぬるかな」藤原兼輔(ふじわらのかねすけ) [■産経抄]

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【産経抄】7月6日

 万葉の歌人、山上憶良(やまのうえのおくら)に「子等を思ふ歌」という長歌がある。「瓜食(うりは)めば子ども思ほゆ栗(くり)食めばまして偲(しぬ)はゆ」。瓜も栗も子供の好物なのだろう。旅先で口にすると、子供の顔を思い出すというのだ。

 ▼これに続く反歌も有名である。「銀(しろかね)も金(くがね)も玉(たま)も何せむにまされる宝子にしかめやも」。どんな宝物よりも子供が優る、と臆面もなく言い放つ。1300年経(た)った平成の世でも、父親が子供に寄せる真情は変わらない。もっとも、それが犯罪に結びつくなら、話は別である。

 ▼文部科学省の局長だった佐野太容疑者(58)が、受託収賄容疑で東京地検特捜部に逮捕された。官房長を務めていた昨年5月、東京医科大学の関係者から、国の支援事業の対象校にするよう依頼を受けた。その見返りに、今年の入学試験で息子を合格させてもらった、というのだ。

 ▼裏口入学の古典的な手口といえば、受験生の親が多額の資金をひそかに大学側に渡すというものだ。今回は佐野容疑者が身銭を切ったわけではない。支援事業に選ばれた大学が国から受け取る交付金、つまり税金が利用された。前代未聞とあきれるしかない。

 ▼「心の闇」という言葉がある。動機が不明の猟奇犯罪が起こるたび、常套(じょうとう)句のように使われてきた。紫式部の曽祖父にあたる、藤原兼輔(ふじわらのかねすけ)の歌が出どころだ。「人の親の 心は闇に あらねども 子を思ふ道に まどひぬるかな」。もともと、親が子を思うあまり、心が乱れて分別がつかなくなる、という意味だ。

 ▼「将来は次官」の呼び声もあったエリートも、「心の闇」から逃れられなかったのか。文科省への信頼はもはや地に落ちた。入試の公平性も損なわれた。何より、あこがれの医師をめざして勉強してきた息子の心情を思うとつらい。

 


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「自然の洞窟は、知識、経験のない人が安易に入ると、アクシデントが起きても、どう対応していいのかわからない」 [■産経抄]

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【産経抄】7月5日

 フランス南西部の小さな村で、世紀の発見がなされたのは、1940年9月である。村の少年が愛犬と散歩していると、犬が倒木の下の穴に落ちてしまった。引っ張り上げようとして、穴の先に洞窟が広がっているのに気づく。

 ▼数日後、友人3人とランプを手に入ってみると、壁一面に描かれた絵に目を奪われる。数百頭もの動物が今にも動き出しそうだった。約2万年前の旧石器時代に、現代人と同じホモ・サピエンスに属するクロマニョン人によって描かれたものだ。世界遺産にもなっている、ラスコーの洞窟壁画である。

 ▼ラスコーの洞窟は200メートルほどの奥行きしかない。タイ北部にあるタムルアン洞窟の全長は10キロ以上もあるそうだ。この洞窟で行方不明になっていた地元サッカークラブの少年12人と男性コーチ(25)の無事が、9日ぶりに確認された。13人は洞窟に入った後、大雨による増水で出られなくなった。

 ▼入り口から5キロほどの地点で避難している少年らの手前には、泥水が大量にたまっている場所が何カ所も続く。困難きわまる救出作業には、タイ海軍の特殊部隊のほか、日本を含めた各国の専門家も参加している。

 ▼洞窟探検家の吉田勝次さんは、国内外の千以上の洞窟に入った経験を持つ。著書の『素晴らしき洞窟探検の世界』のなかで、洞窟の魅力を語りつつ、こんな指摘も忘れない。「自然の洞窟は、知識、経験のない人が安易に入ると、アクシデントが起きても、どう対応していいのかわからない」「事故があった場合は、地元の人を中心に本当に多くの人に迷惑がかかってしまう」。

 ▼今は13人の一日も早い帰還を祈りたい。家族と喜びの再会を果たした後、引率のコーチにはきついお叱りが待っているだろうが。


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江戸幕府の幕を下ろした「悲劇の将軍」は、実は人生を楽しみつくした「おじじ様」だった。 [■産経抄]

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【産経抄】7月3日

 実に八十数年ぶりのご対面として話題になった。平成10年に放映されたNHKの大河ドラマ「徳川慶喜」の撮影現場での出来事である。慶喜の孫に当たる高松宮妃喜久子さまが、慶喜役の本木雅弘さんを激励に訪れたのだ。

 ▼慶喜の膝に抱かれてあやされる、赤ん坊の喜久子さまの写真が残っている。「おじじ様に抱っこされにいく」。喜久子さまはNHKに入る前、こんな冗談を口にされた。「でも私が抱かれたら、モックン(本木さん)は潰れるわよ」。

 ▼ドラマは江戸城明け渡しの場面で終わった。当時まだ30代前半の若さだった慶喜は、その後静岡で隠棲(いんせい)生活を送る。明治30年にようやく東京に戻り、現在の東京都文京区にあった屋敷で大正2年、76歳で亡くなった。昨日訃報が届いた井手久美子さん(95)も慶喜の孫娘である。

 ▼自叙伝の『徳川おてんば姫』(東京キララ社)を先月、刊行したばかりだった。なんといっても、子供時代のエピソードが興味深い。慶喜の死後に生まれた井手さんは、祖父を写真でしか知らない。毎朝の食膳に出るおかかは、「おじじ様のご好物」として出されていた。

 ▼慶喜邸の敷地は3400坪もあった。11歳上の姉である喜久子さまとすれ違って、顔を合わせない日もあったほどだ。50人ほどいた奉公人のなかに、「すが」という慶喜最初のお手つきの女官がいた。屋敷に泥棒が入ったとき、短剣を突き立てて泥棒にこんこんと説教した、との武勇伝も残す。

 ▼静岡時代の慶喜は子作りに励んだ。成人した者だけで、10男11女である。写真、油絵、囲碁、和歌、刺繍(ししゅう)、釣り…。のめりこんだ趣味も数え切れない。江戸幕府の幕を下ろした「悲劇の将軍」は、実は人生を楽しみつくした「おじじ様」だった。


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「夏のロケット」のメンバーと同じように、夢を実現できるだろうか。3号機の打ち上げが正念場である。 [■産経抄]

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【産経抄】7月2日

 主人公の新聞記者は、過激派のミサイル爆破事件を追ううちに、高校の天文部ロケット班の仲間たちと再会する。旧宇宙開発事業団の研究者、材料工学の技術者、やり手の商社マン、そしてミリオンセラーを連発するロックシンガー。

 ▼彼らとともに、再び宇宙をめざすことになった。民間人だけでロケットを打ち上げる。作家の川端裕人さんのデビュー作『夏のロケット』は、その可能性を描いた作品である。平成10年の刊行当時は、荒唐無稽な物語にも思えた。

 ▼ところがすでに米国では、国際宇宙ステーション(ISS)に物資を届けているスペースX社をはじめ、民間企業が続々と宇宙ビジネスに参入している。日本でもベンチャー企業のインターステラテクノロジズ(IST)が、民間単独での日本初のロケット打ち上げをめざし、川端さんも注目してきた。

 ▼ISTが開発した観測ロケット「MOMO」2号機は全長10メートル、重さは1トン。安価な電子部品を利用するなどして、わずか数千万円のコストに抑えた。本社を置く北海道大樹町で先月30日、高度100キロ到達を目標に打ち上げられたが、直後に落下、炎上した。

 ▼昨年7月の初号機の打ち上げも、宇宙空間に届かず、失敗している。ロケットの打ち上げ場所として町の知名度が上がり、雇用の創出と観光客の増加をもくろんできた地元の落胆は大きい。ISTに出資する実業家の堀江貴文さんは、「デスバレー(死の谷)」という言葉を使って、ロケット開発から事業化に至る道の険しさを語っていた。

 ▼ISTの稲川貴大社長は東工大在学中、ロケットサークルを設立していた。「夏のロケット」のメンバーと同じように、夢を実現できるだろうか。3号機の打ち上げが正念場である。

 


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 「『獅子の威厳と狐(きつね)の狡知(こうち)』…か」 [■産経抄]

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【産経抄】6月30日

 28日のサッカーワールドカップ(W杯)の対ポーランド戦で、日本代表チームは負けているにもかかわらず、得点を狙うことなく時間稼ぎをした。結果的に決勝トーナメント進出を果たしたが、この戦術に国内外から賛否両論、さまざまな意見や論評が出ている。

 ▼リスクはあったとはいえ、日本人が好む潔さや、当たって砕けろの精神を捨てて消極策を選んだのだから、釈然としない人が多いのも分かる。「もっと攻めないと観客が怒るよ」。首相官邸で29日に開かれた閣議前にも、閣僚らがこうささやき合っていた。

 ▼ただ、これまで日本はスポーツでも外交でも、正攻法にこだわり過ぎたきらいがある。その意味では日本社会の成熟の表れとも言えよう。政治学者の櫻田淳さんは、自身のフェイスブックに記していた。「日本も、こういう狡(ずる)いサッカーができるようになったかと思えば、実に感慨深い」。

 ▼「『獅子の威厳と狐(きつね)の狡知(こうち)』…か」。櫻田さんは続けてフィレンツェの政治思想家、マキャベリの言葉を引いていた。君主は、オオカミを従わせるライオンの力と、策略を見抜くキツネのずる賢さに学ぶ必要があるとの意味である。どちらかが欠けても国は危うい。

 ▼興味深いことに、政治家からは「選挙と同じだ」、外交官からは「外交と同じだ」との感想が聞こえてきた。ルールの中でぎりぎりの駆け引きをし、多少体裁が悪かろうと結果を出すことがすべての世界ということか。

 ▼そもそも、良いとか悪いとか道徳的に決めつけること自体に無理があろう。作家、池波正太郎さんの人気シリーズ『仕掛人(しかけにん)・藤枝梅安』で、梅安は繰り返し世の道理を説いている。「善と悪とは紙一重」「世の中の仕組みは、すべて矛盾から成り立っている」

 

 


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小笠原諸島・・幕府が領土を守るために取った、先人たちの迅速果敢な措置を見習いたい。 [■産経抄]

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【産経抄】6月25日

 その島の存在が日本人に知られるようになったのは、江戸時代の初め頃である。紀州から江戸に向かう途中に遭難、漂着したミカン船が発見した。生還者の報告を受けて、幕府は早速、探検船を送り出す。島に上陸した一行は、測量を行い地図を作製した。

 ▼この時、日本領として確認した意味は大きかった。幕府が当時付けた名前は「無人島(ぶにんじま)」である。ところが、いつしか島は「小笠原島」と呼ばれるようになった。ミカン船の漂着よりはるか以前に、小笠原貞頼(さだより)なる武将が発見した、との伝説が広まったからだ。

 ▼戦後、米軍の軍政下に置かれていた小笠原諸島が日本に返還され、東京都に編入されたのが昭和43年6月である。明日26日、返還50周年を迎える。小笠原周辺の海域は、日本の排他的経済水域(EEZ)の約3割を占める。

 ▼地政学上の重要性は増すばかりである。鉱物資源や水産資源についても、大きな開発可能性を秘めている。数年前は、中国漁船によるサンゴ密漁に悩まされた。そこで海上保安庁では、巡視船配備を計画していると、昨日の小紙は伝えていた。航空自衛隊も移動式警戒管制レーダーの展開基盤の整備を予定しているという。

 ▼実は小笠原諸島の価値の大きさに気づいたのは、欧米諸国の方が先だった。捕鯨船が頻繁に立ち寄り、19世紀に入ると、ハワイから移民が入った。幕末の「黒船来航」後は、米英両国が領有宣言するに至る。

 ▼慌てた幕府は、太平洋横断を果たしたばかりの軍艦咸臨丸を派遣する。外国奉行、水野忠徳(ただのり)を長とする一行は、島民たちと粘り強く話し合い、島々の綿密な調査を行って、見事小笠原諸島の「回収」に成功した。領土を守るために取った、先人たちの迅速果敢な措置を見習いたい。


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国連劣化・・「人権理は人権ではなく、政治的偏向に基づき行動している」 [■産経抄]

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【産経抄】6月21日

 米国が、国連人権理事会からの離脱を表明した。「イスラエルへの慢性的な偏見」が理由である。トランプ政権の親イスラエル政策の是非はともかく、ヘイリー米国連大使のこの発言には、一面の真理がある。「人権理は人権ではなく、政治的偏向に基づき行動している」。

 ▼確かに2006年に設立された人権理は、慰安婦問題をめぐって日本を批判する、歴史戦の舞台として利用されてきた。たとえば韓国の康京和(カン・ギョンファ)外相は今年2月、人権理での演説で、15年の日韓合意は慰安婦問題の解決にとって不十分との認識を示したばかりである。問題の「最終かつ不可逆的な解決」を確認した合意を無視したに等しい。日本政府が抗議したのも当然だった。

 ▼その康氏が、紛争地域における性暴力の根絶に向けた「女性とともにする平和イニシアチブ(主導)」なる新計画を発表した。韓国外務省から河野太郎外相に、慰安婦問題とは無関係、との説明があったそうだが、とても信用できない。

 ▼諮問委員の一人、尹美香(ユン・ミヒャン)氏は、元慰安婦の支援団体である韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会の代表を務めている。ソウルの日本大使館前で毎週行われる反日集会を主導してきた人物だ。

 ▼やはり委員に選ばれた元慰安婦が暮らす施設「ナヌムの家」の安信権(アン・シングォン)所長とともに、日韓合意に反対してきた。康氏は新計画の発表前に、慰安婦問題を深刻な人権問題として国際社会に定着させる、との趣旨の発言も行っている。いずれ日本に刃(やいば)を向けてくるだろう。

 ▼北朝鮮の強制収容所では、拷問や公開処刑が横行しているという。何より拉致被害者の苦しみほど、深刻な人権問題が存在するだろうか。それに目を背けて南北統一を夢見る文在寅(ムン・ジェイン)政権に、人権を語る資格はない。


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「なまつ大事」・・23年前の阪神大震災以降、秀吉の時代と同じ地震の活動期に入ったようだ [■産経抄]

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【産経抄】6月19日

 ナマズが地下で暴れると地震が起こる。江戸時代に広まった俗信は日本独特のものだ。地震考古学が専門の寒川旭(さむがわ・あきら)さんによれば、生みの親は豊臣秀吉である。

 ▼「ふしみのふしん、なまつ(ナマズ)大事にて候」。伏見城の築城に取りかかっていた1593年、工事(普請)を担当していた家臣にこんな手紙を送っている。地震をナマズにたとえて、しっかり備えるよう命じる内容だった。

 ▼秀吉はその7年前、琵琶湖西岸の坂本城で天正地震に遭遇していた。地震で琵琶湖のナマズが暴れた、との噂を耳にしたのかもしれない。もっとも秀吉の警告もむなしく、伏見城は1596年の慶長伏見地震で倒壊する(『秀吉を襲った大地震』)。

 ▼大阪府北部で昨日発生した震度6弱の地震は、通勤の時間帯を直撃した。交通機関は軒並みストップして、駅は人であふれた。高層ビルのエレベーターに閉じ込められる被害も相次いだ。あらためて、強い揺れに対する大都市の機能の脆弱(ぜいじゃく)性が露(あら)わになった。高槻市では、登校中の9歳の女児が、倒れたブロック塀の下敷きになって死亡する、悲惨な事故も起こっている。

 ▼震源は、神戸市から高槻市へ東西に延びる有馬-高槻断層帯のすぐ東側に位置していた。慶長伏見地震を引き起こしたのも、この断層帯の活動だった。周辺には、大阪市の中央を走る上町断層帯や生駒断層帯、六甲・淡路島断層帯など、多くの活断層が密集している。

 ▼23年前の阪神大震災以降、秀吉の時代と同じ地震の活動期に入ったようだ。17日には群馬県でも、震度5弱の地震が観測された。東日本大震災の忌まわしい記憶もよみがえる。「なまつ大事」を肝に銘じて、被害を最小にするために防災体制の充実を急ぐしかない。


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「越後屋、おぬしもワルよのう」・・「名代官」自慢がお国柄だった自治体の不祥事 [■産経抄]

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【産経抄】6月18日

 小判の包みを何食わぬ顔で袖の下に入れる。不敵な笑みを浮かべて悪徳商人に声をかける。「越後屋、おぬしもワルよのう」。代官といえば、時代劇のおなじみのシーンを思い浮かべてしまう。

 ▼江戸時代、幕府の直轄領の民政を担当していた代官が、しばしば悪いイメージで描かれるのはなぜだろう。歴史家の山本博文(ひろふみ)さんによると、大正時代の講談本『水戸黄門漫遊記』がきっかけである。黄門様が悪代官を成敗する話は庶民に受けた。テレビ時代劇「水戸黄門」でも多くの悪代官が登場している(『悪代官はじつは正義の味方だった』実業之日本社)。

 ▼静岡県伊東市の前市長、佃弘巳容疑者(71)が、収賄容疑で逮捕された。現職時代、越後屋ならぬ地元の建設業者から、現金1千万円を受け取っていた。市議と県議を通算6期、市長を3期12年間務めている。剛腕市長の評判もあった佃容疑者の正体は、「悪代官」だったのか。

 ▼事件の舞台となったのは、市の中心部にあるリゾートホテルの跡地である。平成26年に建設会社が約4800万円で取得した。それから1年も経(た)たないうちに、佃容疑者の強力な指示によって、市が2億500万円で買い上げた。1千万円は、その見返りとみられている。問題の土地は現在、図書館などの駐車場として利用されているだけだ。

 ▼本のタイトルの通り、領民に慕われる優れた代官も実は少なくなかった。なかでも幕末、現在の伊東市を含む伊豆国韮山(いずのくににらやま)の代官だった江川英龍(ひでたつ)(坦庵(たんなん))は、今も地元で「坦庵さん」と親しまれている。世界文化遺産になった鉄の精錬施設「韮山反射炉」を築造し、領民に種痘の接種を勧め、貧民救済にも努めた。

 ▼もともと、「名代官」自慢がお国柄だったはずである。


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