So-net無料ブログ作成
検索選択
前の10件 | -

その響き百千の雷をなし 3月29日 [産経抄]

閉じる

2017.3.29 05:04

【産経抄】その響き百千の雷をなし 3月29日

 雪崩の本当の恐ろしさを知るのは、体験した人だけである。日本の雪崩研究のパイオニアだった故高橋喜平さんも、岩手県の雪山で巻き込まれた。

 ▼4メートル上方から雪が落ちてきた瞬間、「汽車が急停車したときのような衝動」を受けた。ほとんど意識を失い、気がついたら80メートル下の雪上に立っていた。片方のスキーが何かの突起物に引っかかって偶然取り残されたらしい。助かったのは奇跡である。

 ▼高橋さんによれば、すでにある固い雪の上に、新しく降り積もった部分が滑り落ちる「表層雪崩」だった。日本では、斜面全体の雪が全て崩れ落ちる「全層雪崩」に比べて、こちらの遭難が圧倒的に多い。前兆が少なく、滑落速度も大きいからだ。

 ▼栃木県那須町のスキー場で27日に発生した雪崩も、表層雪崩だった可能性が高い登山の講習会に参加していた県立高校の男子生徒ら8人の命が奪われた。高橋さんは、かつて小紙のインタビューで、表層雪崩についてこう語っている。「降雪量の多い時は注意しなければいかんです。風がともなう場合はさらに何倍か危険だ。そういう時は無理をしない」。

 ▼現場は、まさにその通りの天候である。前日からなだれ注意報も継続中だった。当日朝予定していた登山は中止になった。ではなぜ、雪をかき分けて歩くラッセルの訓練を続行したのか。引率した教員の判断に、無理があったと言わざるを得ない。

 ▼「幾千丈の山の上より一度に崩れ頽(おつ)る、その響き百千の雷(いかずち)をなし大木を折り大石を倒す」。江戸後期の文人、鈴木牧之(ぼくし)は、『北越雪譜』で、雪崩の破壊力の大きさをつづっている。昔も今も、雪崩の脅威には逆らえない。無理をせず、危険地帯に近づかない知恵だけが命を守ってくれる。


タグ:産経抄
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:ニュース
前の10件 | -